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君と鼓動が重なる時・2【進撃の巨人】

第128章 千丈の堤も蟻の穴より崩れる




「……なんだ。仲間は一人だけか?」


エルヴィンの声が静かに響く。


姿は見えない位置だが、
声からしてかなり激昂している気がして、
小さく息を呑んだ。



「なっ…、1人じゃない!
呼べばすぐ来る場所に隠れてる!」

「呼べばすぐ?
それなら、今すぐここで君たち二人を
私が消せば問題ない、ということか。」

私も随分舐められたものだな、
というエルヴィンの声が聞こえてすぐ、
首を絞められたような切ない呻き声が聞こえた。

きっとエルヴィンをここまで連れてきた
男の声だろう。

呻き声は次第に小さくなり、
如何にも、人が倒れた、
と分かるような音が木霊する。

その直後、首筋に刃物の冷たい感触が伝わった。


「こっちには人質がいる!
下手に動けば切る!」

「ほう。君にそんな勇気があるのか?」


エルヴィンの足音が聞こえると同時に、
刃物は首筋に近付く。


怖くない、と言えば嘘になる。

それでも、それよりも
エルヴィンを信用している感情の方が大きい。



「近付くな!本当にやるぞ!!」


男の叫び声が鼓膜を酷く乱暴に震わせる。


エルヴィンは足を止めたようだが、
男の息は荒く、冷静さを欠いているようだった。


このままだとマズイな……


一度大きく深呼吸をし、
今の状況を頭の中で整理する。



地道に動かし続けていた手は、
あと少しでロープから抜け出せそうだ。

抜け出すことが出来れば、
男が飛び道具でも持っていない限り、
逃げることが出来る。


小刻みに手を動かしていると、
それに気付いたのか、男に睨まれ、
咄嗟に動きを止めた。


「お前、下手に動くと本当に、」


突然鳴り響いた重い衝撃波が、
男の声を掻き消す。


それとほぼ同時で、
その男は歪んだ呻き声と共に倒れ込んだ。

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