第128章 千丈の堤も蟻の穴より崩れる
持って来た書類の確認してもらい、渡した後、
ピクシス司令と軽くお茶をしてから帰路に着く。
まだ4時を過ぎたところで、辺りは明るい。
司令に馬車を頼もうかと提案されたが、
最近あまり運動していないこともあるし、
一人でゆっくり色々と考えたいこともあるので、
それは遠慮し、街の中を歩いて帰ることにした。
今日は何かと驚かされることが多かった。
リヴァイやエルヴィン、モブリットの行動や
発言についてもだけど、
アンカの発言にもかなり動揺した。
アンカはモブリットと私が
一緒に居るところだって
何度も見たことがある筈だけど、
それよりエルヴィンと私の方が恋仲に見えた、
ということか……
最近ずっとモブリットを
意識させられるような言葉ばかり
掛けられていたから、
アンカの見解は新鮮で、興味深い。
モブリットばかりに意識が向きつつあったが、
また多方向に目を向ける必要があることを
再確認した。
今晩はリヴァイと過ごす訳だし、
そこでも自分の気持ちを整理したいところだ。
そんなことを色々思案しつつ
足早に歩いていたところで、
いきなり腕を引かれ、咄嗟に後ろを振り返る。
が、それより先に口を塞がれ、
動きを封じられた。
……もしかして、これって、
考える暇も抵抗する隙もなく、
強い眩暈を感じ、意識は簡単に遠退いた。