第128章 千丈の堤も蟻の穴より崩れる
「団長があなたを見る目も
明らかに他と違うと思ったけれど、
凛が団長を見る目も、
他とは違う様に感じたわ。
違ったかしら?」
「アンカの目には、そう映ったのか……」
「そう言うってことは、私の読みは外れ?」
「うーん……
まだ自分でもよく分かってなくて……」
今の状況を全てアンカに話す訳にはいかない。
返答に困っていると、
小さく頬を緩ますアンカが視界に入った。
「ごめんなさい。
あなたは真剣に悩んでいるようなのに。
なんだか羨ましく感じちゃったの。」
「……羨ましい?」
「ほら、私って
殆どピクシス司令の側にいるから、
普段司令以外の男性と話すことって、
あまりないでしょう?
だから、そんな風に悩めるほど素敵な男性が
側にいることがいいなぁって。」
「え、でもアンカ、同じ参謀の一人の
グスタフとは仲良さそうだったよね?」
「グスタフはただの腐れ縁よ……
そんな仲にはならないわ。」
「そうなの?
アンカ美人だから勿体ないなぁ。
私が男だったら絶対放っておかないけど。」
「あら。相変わらず凛は嬉しいことを
言ってくれるんだから。」
今日一番の笑顔を見せてくれたアンカに見惚れ、
思わず足を止めそうになりながら廊下を進んだ。