第127章 動揺の日
「こんなことをするのは良くないと
分かっているんだけどね。
凛を見ていると
色々仕掛けたくなってしまう。」
「……根っからの悪戯っ子ですね、団長は。」
厭味を込めた発言の筈だったが、
エルヴィンは楽しそうに笑っている。
「ああ。君に対してだけだが。
少年の心を思い出したかのようだ。」
なるほど。
スカート捲りをする男子と同じ心境か……
いやいや……思わず納得しそうになるが、
そんなこと認められない。
「また少年の心を
思い出すことがあるかも知れないから、
その時はすまない。」
「少年の心は、
夢を追うためだけに取っておいてください。
私は成年の心の団長に悪戯されるだけで
間に合ってますから。」
「……いいね。次は君の部屋で、
ゆっくり色々と“悪戯”させてもらうよ。」
冗談めかした発言に合わせて
物申したつもりなのに、
艶を帯びた声色が耳元を掠め、
必然的にまた熱は顔に集まってきた。
「それにしても、良く書けている。
何処に出しても恥ずかしくない記録書だ。
特にこの部分のまとめ方は秀逸だ。
やはり君に頼んで良かったよ。
これからもこの調子で頼む。」
いつの間に読んだの?!
思わずそうツッコミそうになりながら、
手渡されたバインダーを受け取る。
さすがエルヴィン団長……
としか言いようがない。
優しい笑顔を向けられると、
さっきまでの動揺するやりとりも
どうでもよくなってしまいそうになるから不思議だ。
エルヴィンの笑顔にはそれくらいの効能がある。
満足気に去って行く背中を見送り、
そろそろ休憩に向かおうと歩き出した。