第2章 モブリットの疑問
「凛。勉強は捗ってるか?」
「うん。なんとなく、ね。」
曖昧に返答する凛さんの
頭を撫でる団長に視線を向ける。
団長がこうして優しい声を発しながら
誰かの髪を撫でるのだって、
見たことがないどころか、
想像すら出来なかったことだ。
この光景は、
いつ何度見ても、見慣れることはない。
確かに凛さんは可愛いと思うし、
性格も努力家で優しい上に、よく気が利く。
だが、そんな感じの兵士だって、
この兵団内には何人もいる訳で、
それなのに、凛さんのどこに
団長をこんな状態にさせる力があるのか
疑問にも思っていた。
きっと俺はまだ、凛さんの本質に
触れることが出来ていないんだろう。
もし俺がその本質に気付いたら、
俺も団長のような状態になるのだろうか……
少し想像してみるが、
恋愛からは程遠い生活を送っている今、
自分が色恋沙汰で頬を緩める姿は、
思い描けそうになかった。