第124章 純粋で明白な感情
……本当に厄介な感情だ。
エルヴィンは凛の唇を
唇で丁寧に愛撫しながら、
ため息を漏らしたい気分になっていた。
愛おしい。
凛が愛おしくて、もはや涙腺まで刺激される。
もう何年も前に、
涙なんて自分には必要ないものだと
切り捨てた筈だった。
この感情は予期せぬものばかりを
呼び起こしてくる。
しかも、戸惑いはあるものの、
この感情が悪いものだとは思えず、
そんな自分さえも認めてしまいそうになる。
……何を今さら、
人間らしい感情を見出しているんだ。
自分で自分に苦笑したくなる。
「エルヴィン、」
唇が少しだけ離れた瞬間、凛の声で我に返る。
「……どうした?」
「大丈夫。ここには私しかいないから。」
言葉の意味が理解できないまま、
時間が止まる。
「……私だって、いつもこんなにエルヴィンに
感情をぶつけてるんだから、
エルヴィンだって遠慮なく、
私の前で発散してくれていいよ。」
ただでさえ速かった心拍が、
また活発さを増していく。
微笑む凛の目の淵は、
まだ少し赤みを帯びていた。
……今なら、全て曝け出しても後悔はない。
目を瞑り、小さく息を吐いた。