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君と鼓動が重なる時・2【進撃の巨人】

第124章 純粋で明白な感情





「……色々捨てたつもりだったんだ。」


少しの沈黙が流れた後、
話し出したエルヴィンの頬を、そっと撫でる。



「人並みに喜怒哀楽を表現することも、
人間らしい多様な感情を持つことも、
……幸福感を覚えることも、全て。」


エルヴィンの目は瞑ったままだが、
今にも泣き出しそうな表情に思えて、
何も返事はしないままで静かな声に耳を傾けた。



「自分を人間だと思わず過ごしたかった。
人間性を捨て去ることで、
出来ることが増えたんだ。
自分を騙すことも、仲間を騙すことも、
非情で残酷な決断を下すことも……
少しでも人間らしさを思い出せば、
猛進することができなくなる、
仲間も自分も切り捨てながら進むことなんて
できなくなる、そう思っていた。」


そう言い切った後、少しの沈黙が漂う。


そっとエルヴィンの背中を摩ったと同時に、
エルヴィンは再び口を開いた。



「それでも君といる時だけは、
人でいたいと思ってしまうんだ。

戦場でいくら冷酷な命令を与えていても、
捨て身の判断を下していても、
君の元へ戻れば、
普通の男でありたいと思ってしまうだろう。

……そうなってしまったら、もう今までと
同じようには戦えないと思っていた。
だから、そんなことが起きる前に、
色々な感情にまた蓋をした。……筈だった。」

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