第124章 純粋で明白な感情
エルヴィンは凛の髪にキスをしながら、
指先で髪の毛をくすぐる。
久し振りにこうして凛に触れることができて、
単純に安心感ばかりが湧き出していた。
「……エルヴィンって、
あんまり飲みに行ってるイメージないんだけど。
もしかしてそれも“願掛け”の一つ?」
「願掛け?」
「いや……調査前、私としなかったのも、
何か願掛け的なものだったのかな……
とか、色々考えてて。」
「……なるほど。
確かに似たようなものだったかも知れないね。」
自分が幸福感を味わわないことで
被害者が減ると思っていた訳ではない。
それでも勝手な思い込みではあるだろうが、
そうすることで自分自身の罪の意識や
疚しい感情が軽くなっていた気はする。
「それならやっぱりあの時、
私が無理矢理誘うのは良くなかったよね……
ごめん……」
心許ない声を出す凛を、そっと抱き寄せる。
「そんなことはないよ。
君のお蔭で、色々なものから解放された。
君が強引に迫ってくれなかったら、
俺は今も身動きが取れないままで、
無益な感情に苦しんでいただろう。」
「……どんな強い願掛けしてたの?」
「もうそんなものに頼らなくても、
俺は進んでいける」
君が居るだけで
そう加えたくなるが、
その言葉は口内で噛み砕いた。
……凛が元の世界へ戻らなくてはいけない
可能性が出て来た以上、
今自分がそれを言うべきではない。