第120章 嫉妬の続き
「イアン、帰るって。」
「……ああ、そうか。」
「お疲れさまくらい言ってくれないのか?」
「……お疲れさま。」
イアンには悪いが、
まだ頭の中は凛のことで一杯だ。
色々イアンにも話したいことが
あった気もするが、
そんなことすら忘れてしまっている。
「モブリット、大丈夫だ。」
「何のことだ?」
「今日はお前も仕事を早く終わらせて、
久しぶりに凛と酒でも飲めよ。」
イアンに軽く肩を叩かれ、
長い脚で颯爽と廊下を進んでいく後姿を
見送った。
「何でイアンはあんなこと……」
「さっき普通に話してたんだけどね。
モブリット考え事してたみたいだから、
聞いてなかったよね。」
「……何の話?」
「最近私がモブリットに避けられてる、
って話。」
……やっぱり気付いてる。
だが、ここで認める訳にはいかない。
「避けてなんていないよ。」
「……そっか。」
その悲しそうな顔は反則だ!
凛の表情を直視できなくなり、
思わず視線を逸らした。