第119章 相談相手は恋敵
「だからさすがに慣れてきたのはあるよ。
凛が決断できない気持ちが
理解できない訳でもないし、
こっちが凛に言い寄るのを
止めれる訳でもないしね。」
ようやく露わになったモブリットの表情は、
かなり複雑なものだった。
「だが君はそれに慣れていないようだし、
そんなに苦しい思いをするくらいなら、
いっそのこと凛を諦めてしまう方が
楽じゃないか?」
「それはないです。」
今までの声色とは全く異なった
ハッキリした音声が響き、
思わず笑いが込み上げてきた。
「ははは、そうだろうな。」
「……すみません、
どうしようもないことを相談してしまって……」
「いいよ。どうしようもなくても、
誰かに吐き出したくなることはある。」
「それを団長に話してしまう自分が
情けないんですが……」
「そうだな。
確かに恋敵に相談する内容ではない。」
「……ですよね。」
「それでも君の気持ちが聞けて良かった。
モブリットでも、そういう現場を目にすれば
狼狽えるのか。」
「いや、かなり狼狽えましたし、
悶々としましたし……
今もまだ二人と顔を合わせるのが
苦しいくらいですよ……」
「それなのにさっきの会議では
会わざるを得ないし?」
「……とんだ折の災難でした。」
「もはや慰める言葉もないが、
これから先もこの関係は
ある程度続くかも知れない。
また改めて腹を括る必要があるだろうね。
そんな妙な覚悟をしてでも
凛を想い続けようと思うのか?」
「はい。凛以外考えられません。」
「……なるほど。」
モブリットの表情にも言葉にも、
少しの迷いも見られない。