第12章 ●悪趣味の悩み
「君がいいと言うなら、
理性はどこかへ放っておくことにしよう。」
「……うん。」
それだけ返事をして、
エルヴィンの胸元に顔を埋める。
最初部屋に入って来た時より、
だいぶ暖かい体温と声は
強い安心感を湧きあがらせた。
「だが、いつだったか君に
言われたことがあるな……」
「……?」
「俺が理性はどこかに行った、と言ったら、
今すぐ理性を拾って来い!と。」
笑い声が混じったエルヴィンの発言を聞き、
それを言った時のことを思い出す。
確かあれは、エルヴィンに
初めて抱きしめられた日だった。
ルールを制定した数十分後に
エルヴィンに誘われるようなことを言われ、
焦った末に口を付いて出た言葉だ。