第115章 熱のせい
「むしろ、弱ってるエルヴィンを
見られることなんてまずないから、
お世話できるのが嬉しいくらいだけどね。」
冗談めかして言ったであろう言葉さえ、
心が軽くなる。
「……大丈夫。
今日はずっと側に居るから、
安心して休んで。」
仕事も手伝えそうなのがあったら言ってね、
と付け加える凛を強く引き寄せ、
すぐに胸に抱いた。
「……すまなかった。ありがとう……」
「私の方こそ、いつもありがとう。」
背中に回された細い腕が背中を撫でる。
風邪が移る、なんてことは
もう考える余裕がない。
それくらい凛の体温を、
今は一番近くで感じていたかった。
最近モブリットと過ごす日が
増えてきているようだし、
彼と凛が恋人同士だという噂も
耳にすることが多くなった。
仕事中は特に二人がそんな仲に思われそうだと
感じることはないが、
ふと見せる表情や仕草が
二人の関係性を
予測させることもあるのだろう。
それくらい、今の凛とモブリットの距離は
近いように思う。
ミケには、
「周りにはそう思われている方が、都合がいい」
と言われ、なだめられたが、
実際それが事実ではない噂だと
知っているにしても
その噂を聞く度に心が乱されていた。