第12章 ●悪趣味の悩み
「……この言い分は納得いかないのか?」
疑いの感情が表情に表れていたのか、
小さく笑ったエルヴィンに顔を覗き込まれた。
「やっぱりエルヴィン、そういう言葉、
言い慣れてる感じがするんだけど。」
「他の女性にも甘い言葉を囁いていたんだろう
……と、訝しく思っている、ということか。」
否定も肯定も出来ずに、視線を逸らす。
「君はまだこの世界での俺を、
あまり知らないからな……
無理もないだろう。」
「この世界でのエルヴィンを知ったら?」
「……きっと俺に幻滅して、
君がこんな風に
俺に優しく接することはなくなる。」
そう言って困ったように笑ったエルヴィンを、
思わず強く抱きしめた。