第107章 言葉の力
「いいよ。元々帰るつもりなかったし。」
「……シングルベッド二つしかないのに?」
部屋にはシングルベッド二つと
簡易な木製の机以外、何もなかった。
ソファーも、椅子すらもない。
しかもそもそも部屋が小さいから、
シングルベッドも接触しそうな程の距離感で
置かれていた。
「……うん。そうなんだけどね。」
気まずそうな凛の声を聞きながら、
取り敢えず空いているベッドに
腰を下ろすよう、凛を促し、
自分もいつもより少し距離を取り、横に座った。
いつの間にか、俺と凛の間に
“ソフレ”と言う関係は存在しなくなっていた。
最初の頃は一緒に寝るだけ、
という行為が自然にできていたが、
今は正直言って、それは厳しい。
いや……
でも、そうしようと思えば出来るだろう。
また素数のお世話になればいい。
……一晩かなり身悶えすることになりそうだが、
それも仕方ない。
ふと凛に視線を向けると、
少し身体を強張らせているように見え、
席を立った。