第106章 嫉妬の細波
「……今こうして考えてても仕方ないから、
取り敢えずホテル探ししよ?
それなら私も確実に手伝えるし。」
「この辺ホテル多いし、
すぐ見つかると思うよ?」
「いや、そんなことはないぞ。」
突然背後から聞こえた
重みのある男性の声に驚き、
素早く後ろを振り返った。
「イアン。こんなところで何してるんだ?」
「それはこっちのセリフだ。
モブリット。お前がこんな風に
堂々とデートしてるだなんて意外だよ。」
すらりと長い脚が目に留まり、
そのまま視線を上へ上へと移動させると
スッキリと背が高く、
サラッとした金髪が印象的な男性が
立っていた。
「初めまして。駐屯兵団所属の
イアン・ディートリッヒです。」
差し出された手を握り、
自己紹介をしようとしたところで
「凛さん、ですよね?」
と、先に名前を呼ばれ、思わず目が瞬いた。