第2章 モブリットの疑問
「いえ。
俺は礼を言ってもらえる程のことは何も……」
「そんなことないよ。
訓練終わりでゆっくりしたい時間帯だろうに、
毎日勉強教えてくれて、ほんとに感謝してる。」
凛さんの穏やかな笑顔を見ていると、
脈が少し早くなる。
これもいつものことだが、この現象は
恋や愛なんかの類の感情ではないだろう。
こんなに深く感謝の気持ちを
露わにされたことがないから、
慣れない気恥ずかしさが
そうさせているんだと思う。
「凛さんは呑み込みが早いから、
すごく教え甲斐がありますし、
教えていて楽しいですからね。
訓練の疲れなんて忘れます。」
「またまた!
モブリットはそうやって私を持ち上げて
やる気を増幅させてくれるんだから。」
正直に答えたつもりが、
お世辞に取られたようで
凛さんは笑いながら、
再び教科書に目を向けた。