第3章 地平線の見える丘で
『そういえば、それ何です?』
おもむろに立ち上がった私は兵長の手にあった物を指差した。
「ああ……これか」
彼は細い木を編んで出来たバスケットを一瞥すると、何故か照れ臭そうに視線を逸らす。
なんだろう。
捨て猫でも拾ってきたんだろうか。
そんな事を考えつつスケッチブックを近くのダンボールにしまい込んだ私は、次の瞬間信じられない言葉を耳にした。
「サンドイッチを作ったんだ」
一緒に昼飯でもどうかと思ってな。
ボソボソと言葉を紡いだ兵長は尚も気まずそうにあらぬ方を向いている。
『兵長が……サンドイッチを…?』
「何か文句があるのか」
『い、いえ……そんな滅相もない』
笑っちゃダメだ
笑っちゃダメだ
笑っちゃダメだ……!!
どこぞのサードチ◯ドレン宜しく自分に言い聞かせてみるが、時既に遅し。
ギュッと結んだ唇は『笑いを堪えています』と無言の暴露をしてしまっている。
「笑いたきゃ笑え……柄にもねぇことをしたと自分でも思ってる」
『では遠慮なく』
「……切り替え早ぇなおい」
兵長のお言葉に甘えて爆笑する私。
怖い顔を赤らめてむくれる兵長。
そんな彼の指にたくさんの絆創膏が貼ってあるのを見つけて、またひとつ胸に“愛しさ”が込み上げる。
こうして私達は久々のデートに出掛ける事に相成ったのであった。