第12章 1+2+3+4+5=(国見英)
好きの反対は、嫌いではなく無関心だ。
と、最近なんだか耳にするけど、それは少し語弊があるのではないかと国見英は考えている。
スキの反対はキライだ。
無関心の反対は、関心があるとか興味があるっていうことだ。
そりゃあ興味がないものに好きなんて感情は抱かないけど、だからって無関心と好きを一本の線で繋ぐのは少々安直すぎる。
ーーー多分きっと、正しくはこうだろう。
放課後の人が疎らの教室で、国見はシャープペンシルを手にとった。
机の上に広げられているのは高1数学の問題集。集合と論理の単元。
そのページの端の空いた部分に2つの円を並べて書く。それぞれ「関心」「無関心」と名前を付けた。
「関心」の円の中には「好き」と「嫌い」が入っている。「無関心」の円の中は何にもない。
つまり、集合:関心と集合:無関心は互いに独立であり、好き∈関心かつ嫌い∈関心で無関心=∅なんだ。
無関心には中身がない。土星みたいな空集合。
好きと無関心は階層が一つ違う。もっと簡単にいえば、無関心の反対は好きか嫌いのどちらか。たったそれだけ。うん、完璧。
普段からよく「何を考えてるかわからない」と気味悪がられる国見であるが、この持論に辿り着くに至っても、いつもの無表情を貫いていた。
「好き」の反対は「嫌い」で合ってる。これはもう100パー間違いない。だけどこの2つの感情は、同じ円の中で混ざり合うから、時々区別がつかなくなるんだーーーーーー