第11章 空間期の合間にロマンス(東峰旭)
「素敵なお召し物ですね」
注文を取りに来たウエイトレスが着物姿のなまえを褒めた。席についた途端予想通りに船を漕ぎ始めた彼女に代わって、ありがとうございます、と旭がお礼の言葉を述べる。
「なまえ、なに食べる?」
「私ねぇ……サンドイッチ、」
「そっか。じゃあ、サンドイッチね」
「ん……」
適当に自分の分も注文したあと、眠い?と尋ねてみたら、やっと正直になった彼女は、うん、と小さく言ってそのまま両腕をテーブルに乗せて眠ってしまった。やがて聞こえてきた寝息に、よかった、と安堵した。
このまま少し寝かせておこう。注文が来て、ゆっくり順番に食べていって、最後までなまえが起きなかったら、そのまま家に送ってやろう。
突っ伏した彼女の、まとめた髪が崩れかけていた。男子の旭には、それを直してやることはできない。
全部食べ終わったら、なまえを起こそう。そしたら多分、あと5分って言い張るだろうから、5分だけ待ったあと無理矢理引きずって外にでて、小さい頃と同じように、なまえの手を引いて家に帰ろう。
「お転婆っていうのは、大人になっても直んないもんなのかな」
独り言のように呟いて苦笑する。なまえの祖母を見る限り、きっと一生直らないだろう。だったら尚更、良き理解者がそばにいてやらないといけないな。
「やっぱなまえは、スガとは合わないと俺は思うな」
おしまい