第9章 休日のカバー・ガール(孤爪研磨)
「じゃあ今日はもうお出かけやーめた」
結んだ髪を解いて、メイク落としに手を伸ばしたら、えっ、と研磨が驚いた。
「買い物行くんじゃなかったの?」
「行こうと思ってたけど、研磨はあんまり乗り気じゃないから」
「まぁ、そうだけど……でもそんなのいつものことだし」
いいの?と怪訝な表情をする研磨に、その代わり、に!と私は顔を近付けた。
「無駄な時間を一緒に過ごそ?」
「……つまり?」
「ベッドで惰眠を貪ろう!」
そう言って、研磨の腕の中に飛び込んだ。華奢だけどちゃんと私を受け止めてくれる研磨の身体。その胸の辺りに顔を押し付けて、休日の睡眠ほど無駄で贅沢なことってないよね、と笑ったら、確かにそうかも、と研磨も言う。
こうやって2人でハグすることも、鼻先をちょんとくっつけることも、日曜の午後に微睡むことも、意味がないように見えて実はとても大切な行為なんだと私は思う。明確な意義なんてないかもしれない。でもきっと、私達にとってなくてはならないものなんだよね。
おしまい