第43章 ハネムーンでもリバティでもない(及川徹)
傷を癒す一番効果の高いくすりは、時間なのだと私は知っています。時の流れが、靴擦れの痛みと恋の記憶を薄めてくれるまでは、泣いたり、喚いたり、自分をやめたくなったり、他人に話を聞いてもらわなければなりません。その月日を思うと、今はただ気が遠くなるだけでした。
目の前にある栗色の髪の毛に頬を寄せるようにして、私は問いをひとつ零しました。それに対する返答は迷いも根拠も無いものでしたが、今の私にとっては、十分にこの先の慰めとして機能するものとなりました。
「いい女になれるかしら、私」
「なれると思うよ」
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おしまい
タイトル:シンデレラを名に持つカクテルから拝借