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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第41章 はるかぜとともに(澤村大地)







ちょっとお待ちくださいねー、と1K居室の奥からのんびりした声がする。お店で名刺を渡された時、タバコとコーヒーの混ざった香りのした、スーツのおじさま。ここに来るまでの車の中で、近所のスーパーの場所とか、いろいろ親切に教えてくれた。


「ここらへんのラーメン屋はレベル高くてね。つい帰りに寄っちゃって家内に叱られてしまうんですよ」と気さくに話してくれた5分ちょっとのドライブで、私はすっかり心を開いてしまった。



「雨戸がついているんです、この部屋」

微かに光が漏れる窓へ、影のシルエットが歩み寄る。「風が強い日や、台風が来たときに下ろしておけば、窓が傷つくのを防げますよ」


女の子には重たいかも、という付け足しの言葉と一緒に、金属のシャッターが持ち上げられた。

待ってましたとばかりに3月終わりの午後の日差しが飛び込んできて、私たちを飲み込んだ。寝静まっていた部屋が壁伝いに眠りから覚めていくようで、わあ、と思わず声を出す。



白い壁、ワックスをかけたばかりのつやつやのフローリング、エアコン、照明。あとは窓があるだけ。


中央に立ってぐるりと見渡す。初めて目にする、6.5畳の全貌。


まるでずっとずっと人間を待ち焦がれていたかのように、嬉しそうに輝きだした。


ここが、と、その場でくるりと回りだしちゃいたいくらい、心が躍る。



ここが、私の大学生活 始まりの部屋。

ひとり暮らしデビューの出発点、第一候補地。悪くはない。










「築年数は経ってますけど、適度にリフォームされているので、見た感じは綺麗でしょう」

言われた通り、書面では私と同い年くらいのアパートだった。けれど来てみてびっくり。まるで新築みたい。


「エアコンや照明も、自分で好きな物を買って、取り替えて結構ですよ。ただし、退却時には復元が条件ですけど」


来たばかりなのに出ていくことなんて考えられない。綺麗にします、完璧に元に戻します、と心の中で返事をしながら、修学旅行先のホテルでやったのと同じように、扉という扉を開けてみる。


脱衣所、三面鏡がある!トイレ、消毒済の紙がかけられていて、真っ白。清潔。クローゼットは……うーん、ちょっと狭いかもしれない。洋服全部入るかなぁ。


取っ手があれば手をかける。素敵、空っぽの部屋、素敵。


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