第40章 世界はすでに作られていて、すでに無くなっている(影山飛雄)
ある朝、目が覚めると、ベッドから動けなくなっていた。
縄で縛られていたわけではない。
病気だったわけでもない。
ただ、空中をぼんやりと見つめながら、
疲れちゃったな、 と考えた。
まるで、心のコップに少しずつ溜まっていた水が、知らないうちにいっぱいになったみたいに、
表面張力のギリギリで踏ん張っていたのが、ついに溢れ出してしまったみたいに、
突然その日がやってきたのだ。
気付かないふり、平気なふりをしていたせいで、今日になるまで分からなかった。
今まで無理をしていたんだな、ということに。
――― ナイジェリアで自爆テロ。13人の女児が死亡。
テレビから流れる朝のニュースを横目に、リビングでご飯を食べた。
制服に着替えて、髪を結って、朝ご飯を食べて学校へ行く、という、昨日まで当たり前にしていたことを、全部無視してしまいたくなることは、今までにも何度かあった。
けれど、その日は、その"無視する"という行為さえも、する元気が出てこなかった。
空っぽになった食器を前に、ごちそうさま、と両手を合わせる。
嫌だ、と思うことや、毎日続けていたことを辞めることは、とってもエネルギーが要ることのように思えた。ただ何も考えず、いつもの流れに身を任せていたほうが楽だった。