第39章 始まりは睫毛より上(花巻貴大)
***ここまでのあらすじ***
花巻くんに弱みを握られ
おデコ全開にされた挙句
家にお呼ばれされた!
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そこがいわゆるデザイナーズハウスだとまだ知る由もなく、私はオシャンな花巻家の敷居を粛々とまたいだ。というのは嘘で、実際は「お邪魔します」より前に「やだここめっちゃいい匂いするゥ!!!」と叫んでしまったことを反省しておく。
ふかふかのラグ。白いソファ。高い天井ーーー
何もかも”ちょっと贅沢”のコンセプトが似合いそうなインテリアを背景に、花巻くんが「らっしゃい!!」とラーメン屋の店長みたいなテンションで出迎えてくれた。いやいやいやこの空間で過ごしてなんでそう育つのかな君。
「ま、落ち着くとこに適当に座れや〜」ズカズカとどこかへ消えていった花巻くんは、しばらく経って飲み物をトレイに乗せて戻ってくると、リビングの隅にある観葉植物の陰に体育座りしている私に気が付き「いや、ソファとかにな?」とツッコミを入れた。
「で、何がお望みでしょうか……?」
気をとりなおしてテーブルの前に座った私は(白いソファは高価そうで無理だった)花巻くんに恐る恐る訊ねた。
「お望みというと?」
「ここに私を呼んだ理由は」
「あぁ、それか。まあ本題に入る前に茶でもどーぞ」
湯気の立つカップを薦められる。マサラ・チャイとかさっき思っちゃったけど、出てきたのはフレーバーティーのようだった。甘いすっきりとした良い匂いがする。すごい、なんか、カフェみたい。ワクテカで眼鏡曇っちゃう。口につけようとして、ハッとする。これは罠では!?
毒とか入ってないかな!?いかがわしい薬とか!
「うちの母親が好きなんだよ」あっけらかんと花巻が喋る。「ウェルカムティー。今日はアプリコットジャスミン」
あああよくわかんないけどお洒落だから飲みますゥ!
「ショートブレットもあったからどーぞ」
「えーめっちゃ幸せ……お母様に宜しくお伝えください」
「まあそれ淹れたの俺なんだけど」
「 」