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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第38章 honey honey, doggy honey(瀬見英太)





遠くへ放つ弓矢のように鷲匠監督の怒声が今日も飛ぶ。痩身の71歳とは思えないほどの威勢の良さで未熟な部員たちを片っ端から叱咤するのは見ていて爽快感がある。

その大砲の如き一声、攻撃力は抜群で、標的になった1年はびびって身体の動きが固くなり更に重ねて怒られる負のループで辛酸を嘗める時期をしばらく過ごすというのが白鳥沢バレー部でよく見られる光景だった。

ここで過ごすと「人間って案外強いんだな」と思わずにはいられない。足をとられる泥沼の中をもがいて進んで山越え谷越え、学年が上がるにつれて耐性が付き最終学年にもなると「今日もジジイが元気でなりより」との楽観的境地に達することができる、つまりそれが今の俺。



高校の3年間は夏夜の流星より早く駆け抜けると言われている。萎縮するのは時間の無駄だ。

監督の怒声も慣れたら体育館のBGM。怒鳴られても「ハイ!」「アス!」「シァス!」を条件反射で叫び返せば良いだけのこと。コール&レスポンス、ツーと言えばカーというわけ。


ここで注意を1つだけ。後輩を叱る声に勢い余って関係ない自分まで返事をしてしまうことがある。そこは気を付けたほうが良い。

運動で息が上がって脳に酸素が足りなくなると、判断力が鈍ってくる、だろ?あるよな?
みんな一度はやらかしてると思うんだ、



「ツトム!いい加減にせんかァ!」

迫力のある監督の言葉に反応するように、「ハイ!」とお元気良く返事をしていた。

誰が?
俺が。


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