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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第37章 静謐な人々(牛島若利)





試合の次の日に変わらず登校してきた牛島を見て、教師さえもどう声をかけようかとまごついていたが、彼は気にも止めない様子で過ごしていた。今も淡々と生きている。ロードワークを続けている。


信号が青に変わり、路上の牛島が走り出す。

「部活引退しても、走るんだ」とアホ丸出しの台詞をわたしは口にしてしまう。ぐんぐん遠ざかっていく姿は、勝ち負けなんて何も関係が無いように見える。「スッゲーのね」との適当な感想で区切りをつけて、わたしはぺらぺらと赤本をめくった。




「さっきの話なんだけど、」なまえが口を開いた。「好きな人はいない。でも、好きな言葉はあるの」

顔を上げると、なまえはまだ窓の外を見つめていた。
ペンを握りしめ、これはイタリアのことわざで、と前置きをして、大切な本のタイトルを読み上げるように、ゆっくり声に出して教えてくれた。


「静かに行く人は、遥か遠くへ行く」


それから、真摯な眼差しをこちらに向ける。

「これは、『とか』に入るかしら?」

「なるほどね」わたしはニッと笑った。なるほどね、と繰り返す。聞きたいことは山ほどあったが、きっと沈黙は金というやつ。「良い言葉だ」とだけ言って、親指を立てた。







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おしまい

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