第27章 月が(猿杙大和)※
あなたの人生は、もうすぐ幕を閉じる。
3ヶ月前、あなたの両親は家を捨て仕事を選び、あなたは孤独に耐えきれず、猿杙の家に転がり込んだ。その日の夜、あなたは捨て鉢になって彼とセックスをした。
なんとなく、そういう経験をせずに死ぬのは嫌だと思ったからだ。
諸々を捨てたところで、世界は何一つ変わらないことは分かっていた。
けれど縋りあっている時だけは、ひとりではないと実感できた。いまの間に、月が落ちてくればいいのに、とも考えていた。
あなたは、猿杙と枕を並べて、あれこれと話をした。なぜ性行為はこんなに疲れるのだと愚痴を言いあった。本当に神様は、この方法がベストだと思って人間を創造したのか。他にもっと、効率的なやり方があるのではないか、と話しているうち、いつの間にか眠ってしまった。
あなたの寝顔を、猿杙はじっと眺めていた。長いあなたの睫毛を見て、どうしようもなく満ち足りた感情に包まれて、少しだけ泣いた。しばらくして、あまりにも静かなことに不安になって、死んでいるのではないかとあなたの呼吸を確認したりもした。小さくとも、規則的に寝息をたてていることがわかるとやっと、彼は安心して眠りについた。けれど、夢の中にいたあなたは、そのことを知らない。