第8章 〈笠〉こじぞう
「で、試したい事ってなんだ?」
「お地蔵さんに笠をかぶせたい」
何を言ってるんだお前は。
「あのな……礼なんて来ねぇぞ」
「そういう問題じゃない」
真剣な顔つきを見ると、何も言えなくなった。
ふざけてるならまだしも、本気となると……。
もう救いようがないな。
「いつ」
「今日」
「今日 ! ? クリスマスだぞ?」
慌てているオレとは対照的に大真面目な。
「そう、イエス様がご降誕された日」
「なのに地蔵……」
「さん!」
なんでもっと早くに言わなかったんだよ。
今からどうやって地蔵のとこに行くんだ?
それ以前に。
クリスマスデートって……外でイルミネーション見るとか家でゆったりすんのかと思ってた。
初めてのクリスマスデートが、地蔵。
はぁ……マジでか。
「嫌?」
「普通は嫌だろうな」
「そっか……そうだね、急すぎたしね』
「それに、笠どこで買うんだよ」
「それね。困ってたんだ」
そこら辺の店でなんて見たことねぇぞ。
今時かぶってる人だって見ねぇし。
は本気で困って悩んでいる様子。
しょうがねぇな……。