第8章 〈笠〉こじぞう
「かさこじぞうって知ってる?」
「……知ってるけど」
逆に知らねーヤツなんているのか?
日本昔話とか小学校の国語の教科書で見るだろ。
しかし急にかさこじぞうって…懐かしいな。
「あれあんまり好きじゃない」
「なんでだよ」
「だっていくら笠くれたお礼ったって夜中にズシンズシン音たててお地蔵さんやってきて、それ知らないおじいさんとおばあさんは「何の音じゃろ」ってオロオロするんだよ? 可哀想……」
お前……観点が違うだろ…。
せっかく良い話なのに台無しじゃねぇか。
まぁ、オレも昔はそう思ったこともあったけどよ。
「で、試したいことがある」
「ダメだ」
「まだ何も言ってないじゃないスか~!」
「黄瀬の真似すんな! お前はろくなこと言わねぇから聞く前に却下だ」
「へー。でさ、何を試すかって言うと―」
「オレの話聞けよ!」
はぁ……ったく、誠凛の真似する訳じゃねぇけど、涼太2号だなコイツは。
「え?ってことは笠松先輩ら俺が女の子だったら付き合ってたってことっスか ! ? ……すんませんけど、勘弁っス」
と言っていた黄瀬を蹴り飛ばしたのは他でもない。
勘弁なのはこっちだぜ。