第3章 背中を見せたらいけない相手
おやじさんは一瞬ポカンとすると少し残念そうな顔をした。
親父「なんだー、嬢ちゃんも銀さんかー」
"銀さん"
ビンゴォォォ!
まさか1件目で当たりを引くとは思わなかった。
私の推測が確信に変わる。
親父「なーんで銀さんの周りの女は皆別嬪さんなんだかなぁ...俺だって昔は...」
『まあまあおやじさん。それよりさ、万事屋銀ちゃんに行くのってどう行けばいいの?』
何故か昔話を始めたおやじさんの言葉を遮る。
ごめんねおやじさん。私は過去の栄光より今後の未来の方が知りたいのよ。
親父「そーか、嬢ちゃんは万事屋の客か!えーっと、そうさなー...そこの道を右...」
客「おやっさーん。俺の団子まだー?」
おやじさんが道の先を指さしたとき、
そばにいた客が声を張り上げた。
親父「はいよー!...すまねぇな嬢ちゃん。ちょうど今の時間は混むんだ」
申し訳なさそうに頭を掻くおやじさん。
『いいのいいの!忙しいのにありがとう』
手を振りながら笑って見せる。
本当に大丈夫。だって一番重要なことが聞けたんだから。
親父「そうかい...?それじゃあ、あそこのお巡りさんに聞いてみりゃあいい。きっと連れてってくれるさ」
それだけ言い残して店の奥へ戻っていくおやじさんの背中は、心なしか少し寂しい...
なんかごめんね。
『...タイミングが悪かったな』
ボソリと呟き、残りの団子を口に含む。
『そーいやおやじさん、お巡りさんに聞けとかなんとか...』
ポトリ
最後に残ったみたらし団子が1つ、地面に落ちた。
『...』
おやじさんが去り際に指さした場所。
『...』
そこには、私がこの世で最も憧れる男が立っていた。
『土方さん...!?』