第25章 川立ちは川で果てる
男は得意気に言う。
浪士「この女は真選組に懸賞金かけられた大罪人だぜ」
『!?』
浪士「ったく、何しでかしたか知らねェがお前さんも侮れねェなぁオイ」
男のガサついた手の甲が私の頬を嬲る。
『ちょっと!それは誤報で…!』
浪士「オイお前ら、コイツ連れてけ」
男は聞く耳を持たない。
指示を受けた三下たちがジリジリと近寄ってくる。
『離しなさい、よっ!』
浪士「うっ」
男の鳩尾を膝で殴って拘束を解き、男たちから距離を取る。
『どこ…』
上着やパンツのポケットを漁る指先は袋布をなぞるだけで何も掴まない。
『なんで無いの…!』
近藤さんから受け取った証書は確かにポケットに入れたはずだった。
アレがないと誤報だったって証明できない…
近藤さんが時間を割いて渡してくれたのに、なんで…
慌てて当たりを見回すと、座っていたベンチの側に私の荷物と見覚えのある封筒が1枚落ちていた。
『さっき落ちたんだ!』
ベンチに駆け寄り封筒を拾う。
封筒から取り出した紙は、確かに近藤さんから受け取った証書だった。
『よかった…』
封筒から紙を取り出し、男に向ける。
『アンタ達、これを…』
ガンッ!!
鈍い音が鳴り、じわりと頭に熱が籠る。
私の記憶はそこで途絶えたーーーー。