第3章 背中を見せたらいけない相手
それから数十分...
頬についた爪の跡が薄くなってきた頃
『ふぅ...』
私は人目につかない路地裏に座り込んでいた。
『まあ大体分かってることはこのくらいかな』
いつも持ち歩いている小さなメモ帳にペンを走らせ、頭を整理する。
今分かっていることは、
8月6日の夜、マンホールに落ちる
↓
目が覚めると宇宙人がうじゃうじゃいる
↓
江戸?
『駄目だ。整理するつもりが文字にした途端もっと訳わかんなくなった...』
このままでは整理しようにも情報が少なすぎる。
だが、一つだけ思い当たるフシがあった。
江戸の町、宇宙人
これらは、私が毎週お風呂上がりに見ていた光景にそっくりだった。
この推測を確信に変えるには、ある人を調べれば一発だ。
『さて、せっかくの非番の日に聞き込みでもしますかな』
勢い良く立ち上がり、まずは近くにあった茶屋に入る。
2、3件回ればきっと当たりが釣れるはず。
親父「いらっしゃーい!」
『おやじさん、みたらし1つ』
親父「あいよっ」
え、なんで団子なんて頼むかって?
そんなの決まってるじゃないですか。
せっかくの非番なのに知らない町で聞き込みとかメンドクサイじゃないですか。
だったらいっそこの状況もエンジョイしちゃおうかな、と。
楽しんだもん勝ちかな、と。
親父「へい嬢ちゃんお待ち!」
『ありがとうございます』
茶屋のおやじさんが持ってきたのは皿に乗ったみたらし団子と...
『あれ...おやじさん、私餡子なんて頼んでないけど...』
餡子がたっぷりかかった団子だった。
親父「そいつぁ俺の奢りさ!」
『いいの!?ありがと!』
やった!やっぱり楽しんだもん勝ちだ!
ここ来て良かったー!
『それじゃあ遠慮なく、いただきま...』
喜々として貰った団子を口に運ぼうとしたその時。
忘れかけていた本題を思い出した。
『そうだおやじさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど』
親父「ん?」
頼んだみたらしを頬張り、ニッと笑って見せる。
『ここらで、坂田銀時って知らない?』