第12章 約束
『うっわ!ねぇ凄いよ!ねぇねぇねぇ!』
空に浮かんでは消える花火を見てはしゃぐさくら。
銀時「…中止じゃなかったのか」
花火大会の会場と離れているためか、アナウンスが聞こえない。
『ね!凄いね!』
この様子だと、さくらは花火大会が延期されていたことを知らないのだろう。
ガキみてーに目を輝かせながら俺の顔をのぞき込んでくる。
銀時「汚ぇ花火だ…」
適当に返事をするとさくらが凄む。
『しれっとパクってんじゃないわよ。ベ○ータ舐めてんのか。大御所舐めてんのか。ちなみに私はカカ○ット派です』
銀時「ちなみに僕はウー○ン派です」
『あー似てる似てる』
銀時「オィィィ!あんま適当なこと言うなよ!銀魂まだ見たことねぇ人がもしこれ読んでたらどうすんだよ!」
『だって似てんだもん』
銀時「似てねぇよ!お前ェのせいで銀さんブタになっちゃうよ?少年漫画の主人公にして変態子ブタになっちゃうよ!」
いつになくフルスロットルなさくらのせいでゼーハーと肩で息をする。
『…ふふっ』
それを見てクスクスと笑うさくら。
誰のせいでこうなってると思ってんだ。
銀時「…んだよ」
『いやー』
笑いすぎて滲んだ涙を指先ですくいながら振り返る。
『銀さんが来てくれて良かった』
銀時「…」
思ってもみなかった言葉に呆然とする。
『ここに来れて良かったな。じゃなきゃ皆に逢えなかったもん』
銀時「…」
『銀さんに出逢えて…本当に良かった』
…ドォォォン
一瞬、全ての音が遠ざかり、耳に残ったのは今日一番の花火が打ち上がる音。
『?』
急に黙り込んだ俺を見て小首を傾げるさくらの髪を冷たい風が揺らす。
その時――――
甘い香りが俺の鼻をくすぐった。
銀時「…悪い」
『ん?』
よく聞き取れなかったのかさくらがキョトンとする。
俺はその細い体を
『…え』
もう一度抱きしめた。