第12章 約束
銀時「オイ!」
急に走り出した土方のあとについて行くと、着いた先にあったのは小さな神社だった。
土方「もういない…か?」
息を殺してあたりの様子を伺うが、そこに人の気配はない。
と言うより、鳴り響く雷の音で声を張り上げないと至近距離でも声が聞こえない。
土方「ここじゃねぇみてーだな」
少しうなだれた土方が来た道を戻ろうとしたその時
ピシャァァァ!
昼間かと錯覚するほど空が光り、賽銭箱の裏で何かが動いた。
銀時「さくら…!」
『ぎん…さ…っ…銀さん!』
名前を呼ばれ、顔を覗かせたさくらがこちらへ駆け寄る。
だが唸り続ける雷に怯え、雨ざらしの中、
耳を塞いでしゃがみ込んでしまった。
銀時「大丈夫だ」
『…っ』
雨に打たれながら小さく震えるさくらの傍にしゃがみ、背中をさすると子どものように嫌々と首を振る。
銀時「大丈夫だ」
俺はもう一度同じセリフを繰り返すと、涙と雨に濡れたさくらの顔を胸に押し当ててそっと抱きしめた。
『…う…ふぅ…っ』
銀時「いい子だ。立てるか?」
落ち着きを取り戻した頃合いを見計らってゆっくりと立たせる。
銀時「とりあえず屋根のあるとこまで行くぞ。ここじゃ風邪引いちまう」
未だに耳を塞ぐさくらの肩を抱いて歩みを促す。
銀時「ここまで来りゃいいだろ…そういや…」
すっかり忘れていた土方の方を振り返ると
銀時「…」
いつの間にか野郎はいなくなっていた。