第12章 約束
銀時「はぁ…はぁ…っは」
あれから数分
さくらと別れた真選組の屋台から合流地点である橋までの道はすべて探した。
大体、大通りからの一本道を迷うはずはない。
銀時「ったく…どこ行きやがった」
ゼーゼーと肺が悲鳴を上げる。
濡れた浴衣は水を吸い上げてどんどん重くなっていく。
結局、真選組の屋台まで戻ってきてもさくらは見つからなかった。
銀時「チッ…」
もう一度探そうと踵を返すと
「オイ」
後ろから声がかかった。
銀時「あ…?」
振り返ると、隊服の上に合羽を着た土方が立っていた。
土方「この雨ん中こんなとこで何してんだ万事屋。暇ならちょっと手伝え」
土方が親指で指さす先にあるのは雨による強風でガタガタになった屋台。
土方と同じような合羽を着た隊士達が必死で撤収作業をしている。
銀時「ワリーがこちとらそんな事してる暇はねーんだよ」
出来れば今一番会いたくなかった土方に背を向けて足を踏み出す。
土方「おい待て…」
すると土方が強く俺の肩を掴んだ。
銀時「だーから何だよ……っ!」
苛立ちをあらわにして振り向いたとき、肩を掴む腕を見て思い出した。
銀時「…さっきさくらのこと呼び出したのはてめぇか?」
土方「…!そうだが」
俺は返事を聞く前に土方の両肩を掴んでいた。
銀時「アイツはどこだ…」
土方「戻ってねぇのか?」
銀時「どこだって聞いてんだよ!」
土方は俺の手を払いのけると少し考える素振りを見せる。
土方「まさか…」
すると突然踵を返して走り出した。