第11章 俺のターン
『え…?』
沖田「忘れちまったんですかィ」
総悟の腕が力強く私を抱きしめる。
『…っ』
華奢そうに見えるその腕に一層力がこもる。
こちらからは総悟の顔は見えない。
分かるのは耳元で囁く少し低い声だけ
沖田「さくらが土方さんを選んだ時は諦めるつもりだった。だが…」
『…』
沖田「やっぱり無理だ」
『…え?』
沖田「諦めるなんて殊勝な真似俺には出来ねェ。さくらが土方さんのことを好きなのは分かってる。分かってんだよ。んなこたァ」
総悟の体が離れ、少し距離を置く。
私と総悟の隙間を埋めるように冷たい風が髪を揺らした。
沖田「それでも好きなんだからしょうがねェ」
『総悟…』
沖田「返事は今じゃなくていい」
私の言葉を遮るように総悟は言った。
沖田「絶対に振り向かせる何てこたァもう言わねェ。必ず幸せにするとか、そんな口先だけの約束もするつもりはねェ」
『…』
少し俯いた総悟の表情はこちらには見えない。
雨を誘う冷たい風がサラサラと総悟の髪を揺らし続ける。
沖田「けど少しでも俺に希望があるなら…」
『…っ』
沖田「俺を選んでくだせェ」
顔を上げた総悟の瞳はどこまでも真っ直ぐで、私は声を発することが出来なかった。
『総悟待って…!』
背中を向けて戻ろうとする総悟に声をかける。
沖田「いい返事、期待してやすゼ?」
振り返った総悟は、いつもと同じ不敵な笑みを浮かべていた。