第11章 俺のターン
『何…?!』
顔を上げて身構える。
『熊…!?狸!?狐!?猫!?猫であってくださいお願いします!』
暗い雑木林の生い茂る草をかき分けながら出てきたのは熊でも猫でもない
沖田「猫じゃなくてすいやせんね」
総悟だった。
『なんだ…良かった…』
食われる覚悟をしていた私はゆっくりと膝から崩れ落ちた。
沖田「熊にでも食われると思ったんですかィ?」
『うん…』
沖田「まぁ、食っちまっても良いんですがね」
総悟はしゃがみこんだ私の顎に指をかけて上を向かせた。
『は?!』
沖田「おうおう、真っ赤でさァ」
『…っ』
ニヤニヤと笑う総悟は手を離すと腕を掴んで私を立たせる。
沖田「んなことより」
『…ぇ』
急に総悟が冷たい目をしてジリジリと詰め寄ってくる。
その視線から逃げるように後ずさると、柱に背中がぶつかって退路を断たれた。
沖田「なんで土方さんの、保留になんかしちまったんで?」
え…
『見てたの…?』
沖田「いつ土方コノヤローをぶん殴ってやろうかと待ってたんだが…さくらの返事にビックリしてたら出るタイミング逃しちまって」
そう言った総悟が隊服の袖で私の唇を拭った。
沖田「で、何でオーケーしなかった?土方さんに惚れてんじゃねぇのか?」
『それ…は』
総悟の視線が痛い。
『…分かんない』
沖田「ふーん」
適当な返事をした総悟は何か考える素振りを見せると、私の首筋にそのしなやかな指を這わせた。
沖田「それじゃー俺にもまだ希望があるってことだ」