第11章 俺のターン
『な…!』
土方「前に言っただろ」
土方さんは煙草の火を消すと私の腰を抱き寄せた。
土方「俺ァお前に惚れてる」
『…』
土方さんが…私を…好き
告げられた事実に私の頭はついて行かず、ただ言葉をなぞる事しか出来なかった。
土方さんは更に続ける。
土方「真選組に来い。お前を野郎の所においておくのは我慢ならねぇ」
『…』
土方「さくら。俺の女にならねぇか?」
土方さんの射る様な視線が私の目を覗き込む。
私は土方さんが好き。
答えは決まってる。
『ごめん…なさい』
…え?
土方「…」
私は土方さんから少し離れ、腰を折って頭を下げていた。
なんで…謝ったの…?
今ならまだやり直せる。
『少し…考えさせてください』
私は自分の言葉に動揺を隠せないまま、もう一度深く頭を下げた。
土方「わかった」
土方さんは伏し目がちにそう言うと腕時計を見る。
土方「そろそろ店番の時間だ。俺は戻るがお前はどうする?」
気まずくならない様にしてくれているのが分かって心が痛んだ。
『私は…もう少しここにいます』
土方「そうか」
そう言うと、土方さんは片手を上げて真選組の屋台へ戻って行った。
『はぁ…』
神社の階段に腰掛けて空を見上げると、燦然と星が輝いていた空はいつの間にか厚い雲に覆われている。
今にも一雨来そうな空模様だった。
『さーいあくだ…』
その時
ガサガサガサッ
『!?』
雑木林の奥で何かが動いた。