第8章 嫉妬と浴衣とナース服
居間のソファーに座って皆を待つこと数分
一番に戻ってきたのは…
銀時「お、早いな」
『うん…』
浴衣に着替えた銀さんだった。
銀さんの浴衣姿は何だか私には少し刺激が強すぎて視線を逸らしてしまう。
銀時「?どした?」
俯いた私の顔を、しゃがんで下から覗き込む銀さん。
浴衣からチラリと見える胸元が色っぽくて…
『何でもない…』
言葉が尻すぼみになる。
銀時「あ、何?銀さんの浴衣姿にグラッと来ちゃった?」
『それは無い』
ニヤニヤする銀さんにちょっとイラッとしたので真顔で返すと、銀さんはつまらなそうにそっぽを向いた。
銀時「…あっそ」
『…』
どこかむず痒い沈黙が流れる。
銀時「そういやお前…」
『ん?』
その沈黙を破ったのは銀さんだった。
銀時「浴衣とか…着ねぇの?」
『あー、持ってないからいいかなって。別に着物でもおかしくはないでしょ?』
銀時「そりゃそうだが…」
『それとも…サマースーツ?』
銀時「いや…」
すこし苦笑いをしながら聞くと、腕を組んで何か考える素振りを見せる銀さん。
『どうしたの?』
銀時「そーだ。お前ェ今からババアんとこ行ってこい」
『え?』
なんで急にお登勢さん?
銀時「今神楽がババアんとこで着付けしてもらってんだ。丁度いいからお前もしてこいよ」
着付…それなら私も浴衣着れるかも!
『じゃ、じゃあ私も…』
行ってくる。
そう言おうとしてはたと気づく。
『でも銀さん。花火の場所取りだから時間無いんじゃ…』
銀時「いーんだよ!花火なんて立って見ようが座って見ようが同じだろうが!新八もまだ戻ってこねぇし早く行って来い!」
『わ、分かったよ…』
何故か大声を出す銀さんに後押しされて居間を出る。
靴を履き変えようと玄関に座ると、後ろから銀さんに声をかけられた。
銀時「あとこれ、パチンコの景品」
『?』
銀時「やる」
そう言って疾風の如く居間へ戻る銀さん。
手渡されたものを見るとそれは
『練り香水…?』
小さな薄桃色の小瓶に入った桜の練り香水だった。