第25章 川立ちは川で果てる
振り返るとそこにはボロボロの服とニット帽を被り、段ボールに突き刺さるおじいさんがいた。
おじいさんはニコニコと私を見つめている。
『えっと…』
老人「ずいぶん美味しそうに食うのぉ」
孫を見るように優しく細められた瞳に私が映っていた。
そしてお菓子も映っていた。
『良かったら…おじいさんも食べます、か??』
老人「いいのかい?」
申し訳そうな顔で手はしっかりと私の差し出したお菓子を握っているおじいさん。
『ふふ。買いすぎて困ってたんです、どうぞ』
老人「ありがたいのぅ」
ベンチの端に寄り、2人で世間話をしながらお菓子をつまむ。
おじいさんはこの公園に犬と一緒に住んでいるらしい。
老人「涼しくなってきたのぅ」
背中を丸め、遠くを見つめる。
老人「寒さは老体に堪えるからのぅ。宿無しには試練の季節がくる」
そうか、もうそんな季節になるのね。
優しいおじいさんを見ているとどうにか助けたくなってしまう。
でも捨て猫を拾うような感覚で助けるわけにもいかない。
『…そうだ』
立ち上がり、袋をおじいさんに握らせる。
『ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから』
老人「ん?あい分かった」
ゆっくり頷くおじいさんの手を握り、私は公園を出た。
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『おじいさーん!』
公園に戻ると、おじいさんは変わらず背中を丸めてベンチに腰掛けていた。
老人「お嬢ちゃん、早かったの」
『すぐ戻るって言ったでしょ。はい、これ』
老人「ん?」
風に冷えた手に急いで持ってきたものを渡す。
老人「これは…」
『コーンポタージュ!コンビニにあったかい飲み物入ってたから。あとこれも。貼るのと貼らないのどっちがいいか分かんなくて…どっちもあげるね』
コンビニの売り場で見つけたカイロをお菓子の袋に詰め込む。
老人「いいのかい…?」
『うん。これくらいしか私にはできないけど…ごめんね』
老人「いいや、謝らんでくれ。ありがたく受け取らせていただくよ…」
おじいさんは何度も「ありがとう」と頭を下げた。
『いいのいいの!ほらあったかいうちに飲んで!』
焦ってコーンポタージュの缶をおじいさんの手から取り、
プルタブを開けてもう一度手渡す。
『…え?』
否、缶を受け取ったのは見知らぬ男の手だった。
?「どーも、ゴチになりまーす」