第25章 川立ちは川で果てる
「まいど〜!」
コンビニ店員の景気のいい声が背中にかかる。
『はー…』
自動ドアが閉まると同時にため息が漏れ出た。
『どうすんの、こんなに買って…』
両手には大量のお菓子やジュース。
明らかに多すぎる。
そして重すぎる。
持って帰ること、忘れてた…
まぁ少し歩けばすぐ万事屋に着くし、大丈夫かな。
『よいしょー…』
重たいビニール袋を引っさげ、私は帰り道を歩き出した。
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『いや無理!!!』
気づくと私は空に向かって叫んでいた。
コンビニからの距離は大体電柱3本分ほど。
うーん、歩けなかったね!
無理だったね!
ビニール袋を地面に置き、項垂れる。
重すぎるんだなぁこれが。
手痛いよ。ビニール袋が手に噛み付いてくるよ。
小銭を挟むと良いとか言うじゃない。
小銭って欲しい時に無いのが小銭じゃない。
なんで無いのよ小銭…
『…とりあえず休憩しよ』
近くの公園のベンチに座り、手をぶらぶらと振る。
堰き止められていた血がジワジワと指先に巡る感覚。
手のひらは気持ちの悪い斑になっていた。
『ほんとコレどうしよっかなぁ…』
自分でもほとほと呆れる。
袋の中を覗くと、どれもこれも普段は食べないような物ばかり。
新商品や季節限定の売り文句に釣られたのは火を見るよりも明らかだった。
『こうなったらお菓子とジュース空けて荷物を減らすのが良いのでは…?』
そうだ、最早それしかない。
半ばやけくそで、いや八割五分やけくそでお菓子の袋を開けて口に放り込む。
『なんでこうなるかな、計画性って何それどんな感じ?ちょっと変なテンションだったからってこんな……やっだ何これ美味しい』
やけくそで食べても美味しいコンビニスイーツ。
秋の味覚と生クリームの甘さに頬が緩む。
ありがとう大江戸マート企画部。
貴殿らにノーベル平和賞を授けたい。
予想を遥かに超える美味しさにお菓子を次から次へと開けていく。
『おいしー!』
これだったらいくらでも入るわ!!
みるみるうちにお菓子が胃の中へ消えていった。
『はー、喉渇いた』
甘さに疲れた喉を潤そうと、
袋の中から飲み物を取り出した。
その時ーーー
?「お嬢ちゃん」
『!?』
後ろから肩を掴まれ、しゃがれた声が私を呼んだ。