第25章 川立ちは川で果てる
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近藤「そんなことが…」
話を一通り聞いた近藤さんは鼻の頭を掻いた。
『すみません、長くなっちゃった』
近藤「いや、それは全然構わねェよ。まぁなんて言うかそのー…驚きはしたがな」
『ですよね…私もびっくりです』
へらりと笑う近藤さんに釣られて私も苦笑する。
近藤さんは一呼吸置くと、勢い良く立ち上がった。
近藤「よし、長い間拘束して悪かった!そろそろお開きにしよう!」
『え!?もう良いんですか…?』
本当に私が話しただけで終わってしまった。
もっと根掘り葉掘り聞かれるものだと…
近藤「ああ、これで始末書も提出できるよ。助かった、ありがとう!」
『い、いえ』
呆気に取られていると近藤さんが急かすように筆や紙を片付け始めた。
近藤「おっと、もうこんな時間か。急いで帰らんと日が暮れちまうな」
時計は16時前を指している。
近藤「この時間なら君の逮捕が誤認逮捕だったという知らせも江戸中に知れ渡っているだろう。隊士に万事屋まで送らせるが、一応コレを持っていくと良い」
手渡された紙には逮捕が誤りであったことを証明する内容が書かれており、
近藤さんと松平片栗虎の直筆のサインがあった。
『近藤さん…』
正しい情報が流れるまで、ここに匿ってくれてたんだ…
『ありがとうございます』
近藤「ん?」
なんのことだ、とでも言う様に首を傾げて見せる近藤さん。
近藤「あっ!それからなぁ…」
近藤さんは突然改まった様な態度でゴニョゴニョし始めた。
『?』
近藤「迷惑かけておいてなんだが、その…」
バツが悪そうな顔で頭をガシガシと掻く。
近藤「これからもアイツら…いや、俺たちと仲良くしてやってくれるか?さくらちゃん…」
『…』
突然の申し出にポカンと見つめ返してしまう。
いい大人が真面目な顔でそんなことを言うなんて…
『ふふ…』
つい溢れた笑みを見てさらにきまりが悪くなる近藤さん。
『ごめんなさい、変な意味じゃないんです』
右手を差し出し、近藤さんの右手を掴む。
『何を当たり前のことを言ってるんですか』
近藤「いや、だいぶ迷惑かけちまったからな…」
『そんなの、お互い様です』
掴んだ右手に力を込めた。
『こちらこそ、これからも仲良くしてやってくださいね』