第22章 邂逅
白を基調とした色とりどりの花束。
翔太はその隣に自分の花束を置くと、
膝をつき、手を組み天に祈りを捧げた。
『…』
私はその姿をただ遠くから見つめていた。
翔太「ふぅ…」
顔を上げ、振り返った翔太はにっこりと笑っていた。
翔太「姉ちゃん」
『うん…』
震える手で置いていた花束を掴み、祭壇に向かって歩く。
祭壇の前まで来ると足がすくんだ。
冷や汗が背中を伝い、耳の奥で心音が鼓膜を震わせた。
翔太「ほら」
差し伸べられた手を握ると、自分の指先が冷たいことに気づいた。
子どものように手を引かれて翔太の隣に立つと、置いてある花束がよく見えた。
『…どれも先生が好きな花だね』
翔太「先生はいろんな花が好きだったからみんなバラバラだけどな」
一つ一つの花束に、孤児院の庭に咲いていた花が一緒に束ねられていた。
翔太「姉ちゃんのは…白い薔薇かぁ、綺麗だな」
花束を覗き込み、指先で薔薇を優しくつつく翔太。
『みんな、ここに来てたんだね』
翔太「ああ、毎年ここに花束を置いていくんだ。で、会った兄ちゃんたちとは近況報告とかしてる」
『そっか…』
手のひらがじっとりとして花束のフィルムが手に吸い付く。
『…』
ばん!
『わっ!』
突然背中に衝撃を感じ振り返ると、翔太が口をへの字に曲げて私を見ていた。
翔太「もういいって」
『あ、ちょっと…!』
翔太は私の手から花束を奪うと、自分が置いた花束の隣にそれを並べた。
翔太「まったくよぉ…」
『え…』
翔太「8年も顔見せないで何してんのかと思ったら突然現れて、しかもベンチで寝てんだぜ。信じらんねぇよな」
『いやそれは…』
呆れ返った様子で捲し立てる翔太の手を引くと、強い力で引き戻される。
翔太「やっと全員揃ったなぁ」
『…っ』
見上げた翔太の目には涙が浮かんでいた。