第22章 邂逅
それから、ダラダラと何でもないような会話をした。
高校生の眩さに目が潰れそうになりながらも、楽しい時間だった。
『あー、楽しかった!」
翔太「あー…疲れた…」
『何ですって?』
翔太「いいえ、なんでも」
目を逸らす翔太。
なんとなく無言の時間が流れる。
最初の頃のような気まずい時間ではなかった。
翔太「あのさ、姉ちゃんそれ」
突然翔太が私の隣を指さした。
指し示す先には昨日届いた花束が置いてあった。
翔太「姉ちゃんも持って来たんだな」
『姉ちゃんもって…』
翔太「俺も同じだよ」
翔太は紙袋からレースのリボンの付いた花束を取り出し、立ち上がった。
翔太「俺、姉ちゃんに会ったのはあの日以来今日が初めてだけど、他の兄ちゃんと姉ちゃんには会ってるんだよ」
花束を抱えてゆっくりと身廊を歩く翔太の背中を見つめる。
翔太の歩く先には祭壇があった。
『え…』
私は全く気づいていなかった。
翔太「みんな同じなんだよ、姉ちゃん」
祭壇の影、
あの日私たちを飲み込んだ赤い底無し沼には
いくつもの花が咲いていた。