第21章 落とし物
誰もいない、1人分の足音だけが響く孤児院。
私たちが暮らした大切なホームは、至る所が錆びつき、
蜘蛛が我が物顔で巣を張り巡らす廃墟と化していた。
『流石にボロボロだなぁ…』
沢山の弟妹達と笑い合って過ごした食堂。
年の近いルームメイトと過ごした小さな部屋。
時に喧嘩し、背中を向けて眠った夜もあった。
ここが私の全てだった。
事件のあと、全員がバラバラの孤児院や施設に引き取られた。
私から最後まで離れず、大人たちに無理矢理手を引かれて連れていかれる
1番小さな弟の泣きじゃくる顔が今でも忘れられない。
『…』
あれから弟妹達とは連絡を取っていない。
大人になり、散り散りに引き取られていった施設や通う学校をひっそりと訪れたことがある。
一人一人が新しい場所で、新しい大切な家族に囲まれて幸せそうに暮らしていた。
私の愛した可愛い笑顔がそこにあるだけで、私は満足だった。