第21章 落とし物
渡り廊下を進んだ先にある、一番大きな扉。
私たちが毎日祈りを捧げた教会。
家族に囲まれ、当たり前のようにある幸せがこのまま続くことを毎朝祈った。
『…』
錆びついた扉の前で深呼吸をする。
『大丈夫…』
握った手に力を込め、扉を開く。
『…っ』
射し込む光に思わず目を細める。
少しずつ瞼を開き教会内を見渡すと、懐かしい光景が瞳に映り込んだ。
『…いい匂い』
昔から変わらない。ここはいつも陽だまりの匂いがした。
祭壇に続く身廊を進み、いつも座っていたベンチに座る。
高い天井を仰ぎながら意味もなく観察した。
『天井ってこんな構造だったの…』
あんまり意識して見ることなんてなかったからなぁ。
なんか複雑で難しい…
『ん"ん"…?』
見ているうちに眉間に皺が寄っていくのが分かる。
黒目も段々中央に寄ってきた。
『やーめたっ』
視界のピントが合わなくなってきたので目を閉じた。