第21章 落とし物
『…ただいま』
玄関の扉にチェーンをかけ、着ていたスーツを脱ぎ捨てたままベッドにダイブ。
『ふぅ…』
あのままにしておいたらスーツが皺になる。
分かっていても何もする気が起きない。
体を起こすのが面倒くさい。
『ああ〜、やだよぉニート。心にくるよ耐えられない…』
部屋の隅にあるカレンダーを横目で見る。
今日何曜日だっけ…
あれ、なにあの赤い丸…なんの…
『ああ!!』
ピンポーン…
来客を知らせるチャイムが鳴り響き、慌てて玄関に出た。
『はいはい!』
「こんばんは、城谷生花です!ここにサインお願いします」
若い男の人が元気に花束を渡してくれる。
『あ、はい』
言われた場所に印鑑を押すと、ありがとうございました!と礼儀正しい挨拶をして去って行く。
『ご苦労様です』
ドアを閉めてもう一度チェーンをかける。
『…』
この時間に届いた花束。
あっちの世界に行く前、この時間に届くように宅配を頼んでおいたのをさっき思い出した。
白と緑の可愛らしいブーケは、明日のための花束。
『明日はちょっと早く起きなきゃなぁ』
受け取った花束を水を張ったバケツに立てて入れ、お風呂に向かった。