第20章 選択肢は少なすぎても多すぎても困るもの
銀時「そうか」
『うん』
繋いだ手を離すと、風が一瞬で熱をさらっていく。
銀時「んじゃ、そろそろ片付け合流すっか」
『うん、あっちも花火終わったみたいだし』
銀時「お前そのゴミ持って来いよ」
『はーい』
水を張ったバケツを持った銀さんが川沿いを歩いて行く。
その隣を私が歩く。
いつもと何一つ変わらない。
銀時「あ、俺肉3枚しか食ってねェ!」
『はァ?取り分けてあげたじゃん』
銀時「それしか食ってねェの!腹減ったんだけど」
『家になんもなかったもんなぁ…今日買ってきたのもBBQ用のだけだし…』
銀時「あ」
『宇治銀時丼はダメ』
銀時「は!?誰もんなこと言ってねェだろーが!」
『ふーん。あ、ちなみに納戸の奥に隠してあった餡子は昨日近所のおばあちゃんにあげました』
銀時「はァァァ!?むしろありがとうございますゥゥゥ!そろそろ俺も禁餡しようかなって思ってたとこだったから丁度良いですどーも!」
『何禁餡って』
憎まれ口も慣れたもの。
『…』
…ごめんね
私のわがままに付き合わせて。
ありがとう
神楽「さくら…」
花火を片付ける皆に合流すると、花火を終えた神楽ちゃんが少しシュンとしながら歩いてきた。
『どうしたの、神楽ちゃん?』
神楽「もう花火終わっちゃったヨ…もっとやりたかったのに…」
『そっかぁ…』
神楽「来年もやろうヨ!」
新八「あ、ちょっと、銀さんどこ行くんですか?」
銀時「お前ェらと違って俺ァ肉3枚しか食ってねェんだ。ババアんとこでなんか食ってくるわ」
お登勢「アンタどのツラ下げてそんなこと言ってんだい。溜まりに溜まったツケと家賃、耳揃えて出直しな!」
銀時「昨日のツケと今月の家賃な。わーったよ、今からちょちょっと稼いでくるわ」
右手を軽く握るようにしてひねる動作を見せる銀さん。
稼ぐってパチ屋かよ。
お登勢「昨日も一昨日もずーっとツケだろうがこの飲んだくれが!あと家賃は3ヵ月分だっつーの!」
銀時「ああ!?ウチの金で良い肉しこたま食わせてやったんだ。そんくらいチャラにして然るべきだろーが!」
『それ私の金』
銀時「分かった!わーかったって!一発稼いでくっからちょっと待ってろ!」
そう言った銀さんは、めんどくさそうに頭の後ろで腕を組み、一人、闇夜に消えていった。