第19章 繊細な美
ドタドタと焦って出て行く隊士達。
その後ろ姿が見えなくなると、土方さんが縁側に再度腰掛け、私もその隣に座る。
土方「…」
『…』
人の気配がなくなった縁側。
感じるのは、蒸した空気に侵されたぬるい風と、お互いの呼吸の音。
土方「ったく…プライバシーもクソも有りゃしねぇ」
隊士達を追い払った土方さんが呆れ顔で煙草に火を付ける。
私はその流れるような動作に思わず目を奪われた。
まぁ、マヨ型のライターは見なかったことにしよう。
土方「何だ、また吸いてぇのか?」
ニヤリと口の端をあげて笑う土方さん。
思い出したのは夏祭りに感じた苦い香りで…
『…いえ』
土方「…そうかよ。ま、てめェみてーなガキにゃまだ早ェな」
『ガキ…私20代なんですけど』
土方「俺から見りゃまだまだガキだ」
『私から見たらもうおじさんですよ』
土方「フッ…口の減らねぇ女だな」
ふぅ、と吐かれた煙は西風に乗ってユラユラと消える。
土方「さて、」
『?』
煙草を銜えた土方さんが視線をこちらへ流す。
土方「人払いは済ませた」
『…』
ともう一度煙を吐いて一言。
土方「答えは出たか」