第19章 繊細な美
土方「桂や高杉は"あの"攘夷戦争を生き抜いた言わば化けモンだ。その化けモンと俺達芋侍はどうやって戦う?今のその貧相な剣筋じゃ死ににいくようなもんだろうが」
そこまで一息に捲し立てた土方さんは、もう一度隊士達を見渡して言う。
土方「俺達が戦う時は一度一度が決戦。負ければそれは即ち死を表す。芋侍のこの剣にこの国の命運がかかってんだ。それでもまだ甘ったれたこと言う奴は…戦地に赴く前に俺が斬らなきゃならねぇ」
開いた瞳孔に射られた隊士達は、肉刺のできた掌で竹刀を握り締め、顔を上げた。
隊士1「俺達の手に…この国の命運が…」
隊士2「そうだ、休憩なんてしてる暇無いよな…」
隊士3「副長…俺達まだやれます!」
さっきまでの怠惰な雰囲気は何処へやら。
鬼の一言で隊士達の目に光が宿る。
土方「…フッ」
『…っ』
そんな部下たちの様子を見た土方さんは、少し口元を緩めて薄く笑う。
それはいつになく嬉しそうで、初めて見た鬼の笑みに思わず息を呑んだ。
その時
山崎「副長!」
突然始まった説教Timeに話しかけるタイミングを失っていたジミーが声を張り上げた。
土方「山崎…!てめェ今の今まで何処ほっつき歩いてやがった!時間に遅れた奴は切腹だっつってんだろ!」
山崎「すいません!監察の方がだいぶ長引いちゃって…切腹なら後でしますから。それより…」
土方「あ?」
『!』
ジミーが視線をこちらへ促し、それに釣られてこちらを振り返った土方さんと目が合った。
山崎「お客さんです」
ニヤニヤするジミー。
腹立つなぁ。
土方「…」
私を見て硬直した土方さん。
何となく気まずくて視線をそらす。
土方「…てめェら」
隊士s「?」
一つ溜息をついて一言。
土方「今から30分、トイレ休憩をとる」
隊士s「切腹しろよてめェコルァァァァァァ!」